1975年、パリ16区
- Namiko HARUKI
- 1月14日
- 読了時間: 2分
更新日:3月5日
パリ16区、精神分析家ジゼラ・パンコフの自宅。
幾何学模様の絨毯が敷きつめられたサロンに据えられたソファーには、この家の女主人を挟んで談笑するふたりの男性。
向かって左、パンコフの背中に手をかけ、これからまさに何かを語りだそうとする男性は、ベルギーのルーベン大学で長く教鞭をとったジャック・スコット。
もう一方に、祈るように固く両手みながら深く腰掛けている男性は、かの哲学者アンリ・マルディネだ。
このふたりはともに、お城の病院の創設者ジャン・ウリの盟友でもあった。
この夜もまた、精神分析が患者の経験にいかなる変化を与えうるのか、理論に留まらない実践のリズムが肉薄するような議論が交わされていただろう。
そんな一コマを垣間見せてくれる写真が、Marie-Lise Lacasの手によるパンコフ伝 Gisela Pankow -Un humanisme au-delà de la psychose に挟まれている。
この写真はしかし、パンコフ、スコット、マルディネの3名と同時に、背景に掛けられた「ある一枚の絵」を切り取ることを忘れてはいなかった。
3人掛けのソファーをゆうに超える大型の抽象画。
形をとりつつある理論の数々が、そしてパンコフの最期の吐息をもが染みこんだこの絵画に、わたしたちは既に出会っていたことに気づかされる。
(続く)
