一晩のうちに一気に芽吹いたか。
ついこの前まで読書やダンスを楽しんでいたはずの広場は、すっぽりと緑に呑みこまれている。
春の陽気に浮かされたポプラの綿毛が、ひとつまたひとつと緩慢なリズムで宙を舞う。
「道を拵えないといけないわね」
お城の脇にある託児所を仕切る大人がそう言い残して、草を刈るための道具を探しにどこかへ行ってしまった。
次の瞬間、残された子どもたちのひとりが、その緑の中に勢いよく飛び込む。
地面に腹をぴたりと這わせまま、深い緑の中をぐんぐんと進む。
それを見た誰かが、その子に続く。
その子の後を、また別の子が続く。
小さな身体が大地をなぞり、その線が道となる。
子が大地に身を預けているのか、大地が子に身を預けているのか、だんだんと見分けがつかなくなる。
緑色に染まった上着に、雑草の花飾りをまとってもどってきた子どもたちはみな美しかった。