王家の庭に実る朱色
- Namiko HARUKI
- 6月3日
- 読了時間: 1分
オフィスは、王家の庭跡に隣接している。
かつて標本園は、今は静かな公園。
しかしこの季節になると、大きなサクランボの木の周りは賑やかだ。
観光客たちが、つま先を伸ばして、ヒラヒラと両手を天に伸ばしている。
どこからか、はしごを持ち出してきたならず者。
肩車をしてもらい、もいだはしから口いっぱいに頬張る子どもたち。
その頬もまた、丸い朱に染まっている。
けれども梯子も肩車も届かぬ場所には、鳥たちの分け前が残る。
果実をもぎ、直接口にふくむ幸福。
サクランボの耳飾りを揺らして、少女がかけていく。
夏はきっとすぐそこだ。
季節の恵みを身体にとりこみながら、人も、動物も、来たる季節に備える。
