Namiko HARUKI2023年10月24日風さやさやと秋を吹く最初にお城の病院を訪れたのは、ちょうどこの頃だった。この季節のなると、野生のシクラメンがお城を囲む森にひかえめな姿をみせる。そのうす紫の上を漫ろ歩く滞在者たち。「ここが天国なのか」と見惚れたあの瞬間を、今でもよく覚えている。あれから月日がめぐり、またここに立っている。何もかもが変わり果てたようで、何もかもがそのままだ。樫の木の葉が小舟のように落ちていく。そんなよしなし事をころがしながら、漫ろ歩く狂人たちの森。
最初にお城の病院を訪れたのは、ちょうどこの頃だった。この季節のなると、野生のシクラメンがお城を囲む森にひかえめな姿をみせる。そのうす紫の上を漫ろ歩く滞在者たち。「ここが天国なのか」と見惚れたあの瞬間を、今でもよく覚えている。あれから月日がめぐり、またここに立っている。何もかもが変わり果てたようで、何もかもがそのままだ。樫の木の葉が小舟のように落ちていく。そんなよしなし事をころがしながら、漫ろ歩く狂人たちの森。